2023/3/10水彩画
監修: 足立ゆうじ 名古屋造形大学教授 デザイナー イラストレーター
■目次
水彩画は古くからヨーロッパで親しまれており、数々の画家によってレベルの高い作品が数多く残されてきました。皆さんも一度はこのような素晴らしい水彩画を描きたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
水彩画は水をふんだんに使うので、にじみやムラなどが起きやすく、苦手意識をお持ちの方も多いのではと思います。水彩画特有のにじみやムラを味方にするのは相当の訓練が必要です。
一方、普段使い慣れた鉛筆と同じように使う色鉛筆は他の画材よりも使いやすく感じます。小さい頃より親しむ機会が多かったからかも知れません。
幼少の頃から親しんだ色鉛筆で水彩画が描けたらどうでしょうか。少量の水をつかって色鉛筆の上からなぞるだけで簡単に絵の具が溶けていきます。まるで水彩で描いたような雰囲気に仕上げることができます。
また水彩に適したさまざまな水彩画用紙が販売されています。描きたい絵によって紙の目(荒い・細かい)や水に強い厚手の紙を選ぶことができます。
今回はホワイトワトソンブロックタイプを選びました。ブロックタイプは紙が束になっており四方がのりで張られた状態になっていて、少量の水でしたら紙を濡らしても乾くと元の状態に近づくので大変便利です。
水彩色鉛筆を使って世界で一枚の作品を仕上げてみませんか。
風景画はどこをメインにして描いたら良いか難しいですね。どこが一番美しいと感じたかで判断されると決めやすいです。今回は手前のコスモスを大きく描くことで、奥の方まで広がるコスモスの対比を表現してみました。爽やかに風が吹き抜けていく様も込めて、美しいながらも躍動感のある構図を模索してみました。
下絵を描きます。手前には大きく描いたコスモスを、遠くのコスモスは小さく、大きさに差をつけて奥行き感を表現します。今回は風を受けて花びらが舞っている構図にしてみました。
鉛筆で下絵を描いたあとに水を使うと黒くにじむことがあ りますので練りゴムを使って下絵を軽く消していきます。 消しすぎると塗る時に主線が見えず困りますのでうっすら わかる程度に線を残しておくのがポイントです
舞っている花びらは白く残しておきたいので マスキング液を塗っておきます。ドライヤー を使うと素早く乾かすことができます。
空を塗ります。地平線に近いところ を薄く、上空に向けて濃く塗ってい くと自然な空に近づきます。
水筆を使って、下の方から水平に筆を動かしながら徐々に上に移動していきます。 薄い色から濃い色に向かって水平に溶かしていくのがポイントです。 水の量で色ムラができますが気にせず塗っていきましょう。色ムラは水彩画にとって魅力の一部です。
山を塗ります。遠い山は空になじんで いくような色合いを意識されると遠景 が表現できます。
5と同様に下の方から徐々に上へと水筆で 溶かしていきます。
木の緑を描いていきます。遠景と距 離の差をつけたいので直接水筆に 色をつけ、タッチをつけるように色 を塗っていきます。 筆をランダムに動かして白い塗り残 しを意図的に作るのがポイントで す。白く残した箇所から木漏れ日の ような光を感じることができます。
木の幹と枝を描きます。がさがさした感じを 出すために短いストロークで伸びていく方 向に沿ってラフに描いていきます。
遠景の山と近景のコスモスの中間にあるコ スモスを描きます。山の緑と手前のコスモス の赤を自然なグラデーションに見えるように 間に黄色を置いてみました。 これは17で描くコスモス中央の黄色い部分 (筒状花)と色がリンクしてアクセントになる 予定です。
ここまでの様子です。 10で塗った中景も薄いところから水平に水 筆で溶かしていきます。
先ほど塗った中景のピンクが乾い たら消しゴムを使って所々水平に薄 く消していきます。濃淡をつけること で風をうけてなびくコスモスを表現 します。
木のまわりの緑を描きます。 木の影を濃い緑色で描いていきます。上に 向かってタッチを入れると草の伸びている 雰囲気が表現できます。
コスモスの花びらを描いていきます。 花の脈に沿って色鉛筆で薄い色から塗りま す。それから濃い色を重ねて塗っていき、そ の後水筆で薄い色から濃い色へ馴染むよう に溶かしていきます。
18で塗った花びら同様全体に塗り進めていきます。
小さいコスモスは、色鉛筆から直接 水筆に色をつけて塗っていくと描き やすいです。
コスモスの黄色(筒状花)を描いていきます。 黄色を全体に描いてから濃い色で影をつけ ていきます。黄色い筒状花と赤い花びらの境 目には濃い赤色で影をつけると立体的に見 えます。
コスモスが描き終わったら、周りに緑を入れ ていきます。この上に茎を描いていきますの で明るい緑色を選びました。 その後、濃い色で茎を描きます。下から伸び 上がるように茎を描いていきます。
スパッタリングという技法で中景に広がる コスモスを描きます。 色鉛筆を水筆で払う感じで色を飛ばしてい きます。広げたくないところに紙などでカ バーをしておくのがポイントです。
最初に塗っておいたマスキング液 をラバーで剥がします。
風に舞っている花びらを描き込んだら完成です。 花びらの中央を明るく残しておくと膨らんでいる 感じが表現できます。
完成図です。
水彩色鉛筆は、色鉛筆のふんわりとした優しい表現と、水彩の滑らかで細やかな表現ができる素敵な画材です。また水に濡らすと発色が変化したり、水で色を伸ばした後に消しゴムで色を消すことが出来るところなど、水彩絵の具や油性色鉛筆には無い 面白さがあり、描き方の幅が広く飽きのない画材でもあると思います。
使用する際のポイントとしては、色はある程度大雑把に塗っても大丈夫な所です。水で伸ばすと均等に色を伸ばすことが出来るので、緊張せずラフに作業を進められます。また色を強く発色させたい時は、紙や色鉛筆を水で濡らしてから描くと描きやすいです。そしてスパッタリングをする際は、水の多さで粒の大きさが変化するため、手前は水を多めにすると遠近感が出やすいと思います。
普通の色鉛筆としても使えるファーバーカステルの色鉛筆。 なめらかな描き心地で色を重ねてもきれいに混色できます。 芯が柔らかいため水筆で簡単に溶け発色もきれいです。 プロはもちろん初心者の方にも手軽に水彩画を味わえる おすすめの水彩色鉛筆です。
北山朝子アーティスト
私は小さい頃から絵を描くことが好きで、これまで友達に 絵をプレゼントしたり、学校行事で使用するTシャツや栞な どの様々なデザインをしてきました。その際、依頼してくれ た方々に喜んで貰えたことが嬉しく、将来は私のデザイン したもので人を笑顔に出来る職業に着きたいと考え、美術 大学に進学しようと考えました。 現在は名古屋造形大学で、その為に必要な専門的知識や技 術を日々学んでいます。
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